猫ちゃんの内視鏡検査(胃カメラ)では、食道・胃・十二指腸の中をカメラで直接見ることができます。
見るだけではありません。胃の中にある異物を取り出したり、胃や十二指腸の粘膜を少量採取して病理検査を行ったりすることもできます。
「嘔吐がなかなか治らない」「血を吐いた」「慢性的な下痢や体重減少が続いている」「異物を飲み込んだかもしれない」。
こうした猫ちゃんで、消化管をさらに詳しく調べたいときに選択肢となる検査です。
ルル キャットクリニックでは、外径5.5mmのOlympus製細径内視鏡を備えています。
この記事では、内視鏡で何ができるのか、どんな異物なら取り出せる可能性があるのか、麻酔や外科手術との違いまでご紹介します。
猫の内視鏡検査(胃カメラ)ってどんな検査?
内視鏡は、先端に小さなカメラがついた細長い機器です。
口から挿入し、食道、胃、十二指腸の一部を内側から観察します。
粘膜が赤くなっていないか、ただれていないか。潰瘍や出血、腫瘤、異物がないか。
レントゲン検査や超音波検査では捉えにくい消化管の粘膜そのものを直接確認できることが、内視鏡の大きな特徴です。
さらに、内視鏡の中には鉗子などの器具を通すための「鉗子チャンネル」があります。
当院で使用している内視鏡には2.0mmの鉗子チャンネルがあり、ここから器具を入れることで、組織の採取(生検)や異物の摘出を行うことができます。

見るだけではなく、組織を採って調べることができます
慢性的な嘔吐や下痢、体重減少などを調べるときには、粘膜を観察すると同時に「生検」を行うことがあります。
生検とは、鉗子を使って胃や十二指腸の粘膜を少量採取し、病理検査で詳しく調べる検査です。
消化管の病気では、内視鏡で見たときには大きな異常がなくても、組織を顕微鏡で調べることで炎症や腫瘍などがわかることがあります。
そのため、慢性的な消化器症状を調べる内視鏡検査では、「実際に粘膜を見ること」と「組織を採って調べること」の両方が大切になります。
犬猫の消化管疾患では、内視鏡生検と病理組織学的評価について標準化されたガイドラインもあります。
胃の中の異物を、手術せずに取り出せることがあります
猫ちゃんでは、ビニールやおもちゃの一部などを誤って飲み込んでしまうことがあります。
異物が食道や胃の中にあり、安全につかんで口から取り出せる大きさや形であれば、内視鏡を使って摘出できることがあります。
カメラで異物を見ながら、内視鏡の先から出した鉗子などでつかみ、そのまま口から取り出します。
うまく摘出できれば、お腹を切らずに異物を取り出せることが大きなメリットです。
一方、すでに小腸まで進んでいる異物や、消化管を傷つけている可能性があるものでは、外科手術が必要になることがあります。
猫ちゃんの「ひも状異物」には注意が必要です
特に注意したいのが、ひも、毛糸、リボンなどのひも状異物です。
猫ちゃんでは、ひもの一部が舌の付け根や胃に引っかかり、残りが小腸まで伸びていることがあります。その状態でひもを引っ張ると、腸を傷つけたり、穴を開けたりする危険があります。
そのため、ひも状異物が疑われる場合には、口の中も確認し、レントゲン検査や超音波検査で異物の位置や腸の状態を調べたうえで、内視鏡で摘出できるのか、外科手術が必要なのかを判断します。
口やお尻からひもが見えていても、ご自宅で引っ張らないでください。

嘔吐や下痢が続くときにも内視鏡を行います
内視鏡は、異物を取り出すためだけのものではありません。
嘔吐や下痢が続いている、食欲が戻らない、体重が減ってきた、吐いたものに血が混じるなど、消化器症状が長く続いている猫ちゃんの原因を調べるために行うこともあります。
猫ちゃんの嘔吐は胃腸だけでなく、腎臓や肝臓、膵臓などの病気でも起こります。診察や血液検査などから胃や腸の病気が疑われ、実際に粘膜を観察したり、組織を採取したりすることが診断につながると考えられる場合に、内視鏡検査を検討します。
特に、週に何度も嘔吐を繰り返している、以前より体重が減ってきた、といった状態が続いている場合には、「猫はよく吐くから」と長く様子を見ないことも大切です。
慢性的な嘔吐や体重減少では、慢性腸症や好酸球性の炎症、消化管リンパ腫なども鑑別に挙がります。こうした病気を区別するためには、胃や十二指腸の粘膜を採取して行う病理組織検査が重要になることがあります。
嘔吐を繰り返している猫ちゃんでは、症状が長期化したり、明らかな体重減少が進んだりする前に、一度原因を調べることをおすすめします。
嘔吐に関してはこちらもご覧ください
猫が吐くのは病気?回数・色・一緒に出る症状から考える受診目安
猫の内視鏡検査には全身麻酔が必要です
「胃カメラはしたいけれど、麻酔が心配です」という飼い主さまもいらっしゃいます。
猫ちゃんの内視鏡検査では、全身麻酔をかけて行います。
当院では、静脈から麻酔薬を投与できるように血管を確保し、麻酔導入後に気管挿管を行います。検査中は麻酔モニターで猫ちゃんの状態を確認しながら、その子に合わせて麻酔を管理します。
もちろん、麻酔のリスクをゼロにすることはできません。
そのため当院では、年齢だけで判断するのではなく、その猫ちゃんの体調や基礎疾患を確認し、麻酔方法を一頭ずつ考えます。
検査当日の流れ
検査前には、胃の中をしっかり観察できるように絶食をしていただきます。
当院では一般的に、前日の夜12時以降は食事を抜いていただきます。お水は当日の朝も飲んでいただいて構いません。
来院後は猫ちゃんの状態を確認し、麻酔の準備をして内視鏡検査を始めます。
診断を目的とした検査では、食道・胃・十二指腸を観察し、必要に応じて組織を採取します。観察と生検であれば、麻酔時間はおおむね15〜30分程度です。
終了後は麻酔から十分に覚めるまで院内で状態を確認します。
一般的な検査であれば、当日の夕方には帰宅できることがほとんどです。異物摘出を行った場合や猫ちゃんの状態によっては、その後の管理が変わることがあります。
内視鏡と開腹手術は何が違う?
内視鏡の大きな特徴は、お腹を切らずに消化管の内部を観察したり、処置したりできることです。
胃内異物を安全に摘出できれば、手術の傷を作らずに済みます。
一方、外科手術では胃だけでなく小腸まで直接確認でき、内視鏡では届かない異物を取り出したり、傷んだ腸を切除・再建したりすることもできます。
つまり、両者は競争相手ではありません。
胃の内側からできることは内視鏡で。小腸や消化管の外側まで治療する必要があれば外科手術で。
異物の場所や消化管の状態に合わせて方法を選びます。
よくある質問
Q. 異物を飲み込んだら、全部内視鏡で取れますか?
いいえ。主に食道や胃にあり、安全につかんで取り出せる異物が対象になります。
小腸まで進んでいる場合などには、外科手術が必要になることがあります。
Q. 高齢の猫でも内視鏡検査はできますか?
年齢だけで決めるものではありません。
身体検査や血液検査、これまでの病気などから麻酔リスクを評価し、検査によって得られるメリットと合わせて判断します。
Q. 内視鏡検査をしたら、その日に帰れますか?
当院では、診断を目的とした一般的な内視鏡検査であれば、当日の夕方に帰宅できることがほとんどです。
異物摘出を行った場合や全身状態によっては、経過観察や治療が必要になることがあります。
まとめ
内視鏡だからできることがあります
内視鏡の一番の特徴は、猫ちゃんの食道・胃・十二指腸を内側から直接見られることです。
さらに、見るだけではなく、組織を採って病理検査をしたり、条件が合えば胃の中の異物をお腹を切らずに取り出したりすることもできます。
ルル キャットクリニックでは、外径5.5mmのOlympus製細径内視鏡を院内に備え、猫ちゃんの消化器疾患の診断や異物摘出に使用しています。
嘔吐や下痢が長く続いている、体重が減ってきた、血を吐いた、異物を飲み込んだ可能性があるなど、消化器症状でお困りの場合にはご相談ください。





